磐梯山噴火の研究



会津磐梯山噴火の情景

現在の会津磐梯山は、猪苗代湖の北に長い裾野をひいてそびえたつ、 いわゆる大磐梯(剣が峰1,819M)を主峰とし、 櫛が峰(1,636M)、赤埴山(1,427M)の三峰からなり、 形成時代の異なる火山噴火物(溶岩、火山角れき、火山灰など)から構成されています。 これらの火山噴出物の岩質は、すべて安山岩です。 山体は「会津富士」ともいわれていますように、全体的には成層火山(コニーデ)です。 しかし山腹には、山が噴火してできた凹地(爆発カルデラ)がのこっています。 そのため表(南)からみた姿がコニーデ、北や南から姿が爆発カルデラと、 はたして同じ火山だろうかと思えるほど異なった形をしています。 磐梯山の北側には、かって現在の三峰のほかに小磐梯という山があり、 噴煙が絶えたわけではなかったようです。 しかし、約千年の間眠り続けていた山に、 住民たちは誰一人噴火の心配などしていませんでした。 軽震があったことや、周辺村落の井戸の水位が下がったり、 噴火口に近い中の湯では湯量が減ったことなどが報じられていましたが、 休火山同然であった磐梯山が、 今から110年前の明治21年(1888)に大爆発が起こりました。 この爆発はほとんど水蒸気の圧力(磐梯山の場合は 363気圧と推定されている) によるものでした。 大爆発によって山の北側の美しい小磐梯は、瞬時に飛散しました。 山一つが爆発し崩れてしまったのですから、 その土砂や岩は奔流のようになって北へ流れ出し、 瞬時に長瀬川や小野川、中津川を堰止め、雄子沢、細野、秋元原などの部落は 厚さ数10米の土石の下に永久に葬り去られてしまったのです。 その土石流の速さは時速30Km〜50Kmに達したと推定されています。
 この山崩れによって起きた火山性泥流は長瀬川上流の渓谷を埋め、 日に日に増水していって檜原、小野川、秋元の三湖をはじめとする 無数の湖沼群が生まれたのです。 爆発の年の秋には上流の檜原本村も水没し、 今も湖中に大木の枯れた根株や鎮守の鳥居などを見ることができます。 これはダムによって出来た人工湖を除き、 湖が生まれてから110年しかたっていない日本で最も若い自然湖とされています。
 そこで、当時の磐梯山噴火は一体どのようなものであったか、 その一部をご紹介してみましょう。

正確な噴火時刻

 明治21年(1888)7月21日、午前7時45分、 休火山同然であった会津磐梯山が、突然目を覚まし、 千年ぶりに大爆発を起こし死者477人、埋没、倒壊を含めて 約百戸の被害をだしたこの事件は、 すでに当時の模様を古老に聞くすべもなくなりつつありますが、 十分に信じられる記録として帝国大学(現在の東大)教授の関谷清景氏と 助教授、菊池安氏による「磐梯山破裂実況取調報告」があります。  両氏は7月15日、爆裂がおこると7月18日、25日と それぞれ大学より出張を命ぜられ、現地におもむきこの報告をまとめ、 文部大臣に提出、官報に登載されました。
 これによると爆裂の正確な時刻は 「人々の言う所、多少の遅速ありて一定し難きも、 ひとり耶麻郡蚕養村尋常小学校校長 宇田徹事の報道せし所、最も確実なるに似たり。 日く我所持の時計は其の前日、すなわち14日鉄道停車場の時計を見て改正せり。 これによれば爆発は15日午前7時45分に在りと」となっています。
 当日の模様については 「当時の実況の要領は、本日は西北西の微風ふき天気快晴雲を見ざるほどにて、 別に暑気も強からず、朝7時頃よりはるかにいんいんたる鳴動を聞きしかば、 是は遠雷の響きならんと思い居りしに、暫時の後すこぶる強き地震あり、 続いて激烈なる震動起り、その最中に一層激しき音をなし、 小磐梯山より一道の煙柱状をなして立昇れり、 ・・・・・・これを遠方より見しという者の言に、 一旦柱状を成したる煙は傘のごとく広がり四方に漂蔓せしが、 この時はその高さ少なくも大磐梯山の3、4倍に達したり」 と生々しくその状況を伝えています。
 この大爆発はおよそ1分間ぐらいで、その後小爆発が30〜40分続き、 間もなく濃厚な火山灰が降り始め、一時は四方暗黒になり 「暗黒なること夜の如くなり、天を弁ずる能はざるに至る。 此の間およそ10分余なりき」
 この昇騰した噴煙の中に「 3、4回電光の閃くを見たりと言ふは磐梯山の南及北に住する人々の共に言う所なり、 ・・・・・・蒸気の迅急なる速度を以て運動し灰、空気等と摩擦するに於ては 電気を発するは理学者の知るところとす。 故に今回電光を見たりと言うもあやしむことはあらざるなり」 と他の火山爆発の際にもしばしば起ることだと、冷静に報告しています。

火山災害への備え


 磐梯山をつくったマグマは、安山岩質のもので、やや流れにくい性質があります。そのため火山ガスがでにくく、爆発的な噴火になる傾向があります。気象庁では常時火山活動を観測していますが、私たちはこれまでの磐梯火山活動の特徴をよく知り、その力の大きさを侮らずに、常に関心をもちながら生活をすることが大切です。




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